

Paths Intertwined Liner Notes
1. Seek
私は、気候の穏やかな季節には近くの散歩道を歩くのが好きなのですが、その道中、無意識のうちに生まれた鼻歌からできた曲です。絶対にメロディーを作り上げるまでは帰らない!と意気込んでいたら、帰る頃には汗だくでした。この曲は、浅草ジャズコンテストや上野JAZZ INN '24で演奏した曲でもあり、私たちのバンドを象徴する想い出深い曲になっています。
2. Tricolored Bubbles
知り合いの陶芸家の方で、はらまさよさんという方がいらっしゃいます。その方の個展に伺うと、そこにはJAZZプレートと名付けられた色彩豊かなプレートたちが壁に飾られていました。3色の泡の中で生まれた彼らは、その瞬間の奇跡を切り取ったように色付いていました。それらを見たとき、その一枚一枚が、ジャズの自由さを持ったさまざまな曲たちになって頭の中に流れてきました。これは必ず曲にしなくてはいけない、と家に迎え入れた 一枚のプレートと向き合ってできた一曲です。
3. Kukulkan
このアルバムの中で唯一のメンバーオリジナル曲です。ベースの小美濃さんと演奏し始めたのはごく最近ですが、彼のアルバムを聴いて最初に衝撃を受けたのがこの曲でした。私の中の「曲とはこうでなくてはいけない」という決めつけのような気持ちを打ち砕き、ただひたすらにとつとつと流れていく美しい音たちに身を任せていく、、、この楽曲をどうしてもクインテットでも演奏したくて、渋谷のジャズクラブBODY&SOULのカウンターで小美濃さんに「私にアレンジさせてもらっても良いですか」と頼み込んだのをよく覚えています。(鈴木)
日は静かに昇り、穏やかな光のグラデーションを描きながら、やがて沈んでいく。マヤ神話の神・ククルカンは、その影とともにピラミッドに現れるとされています。徐々に変化していくハーモニーを、創造神が光と影によってゆっくりと描き出されるさまに重ね合わせて、タイトルとしました。
その意図を汲むだけでなく、情景のもつ質感と荘厳さを加えて表現してくれた瑶子さんのアレンジ。彼の地の静かな神秘が音楽に宿ったテイクです。(小美濃)
4. Monochrome
この曲は、「絶望と希望は実は表裏一体のであるのかもしれない、またはそう思いたいだけかもしれない、それでも、そう信じることが必ず救いにつながる」という想いを込めて作りました。メンバー一人一人の気持ちがぶつかり合って生まれたこの日だけの情景をお楽しみください。
5. Apricot Jam
毎年春になると、綺麗な薄いピンクの花を咲かせる木が家の近くに植わっていて、この木は何の木なのだろうと考えていました。調べてみると、それは杏の木で、しかも私の誕生木だったのです。不思議な縁を感じ、その時できた曲にこの名前をつけることにしました。花言葉は「乙女のはにかみ」。少し控えめな笑顔と杏ジャムの甘酸っぱさは、どこかこの曲に通じるように思います。
6. Old Pal
「旧友」と名付けたこの曲は、今回どうしてもこのメンバーでレコーディングしたかった曲の一つです。リハーサルへ出かける直前の5分、レコーダーをつけて、思うままに一音一音紡ぐようにつくっていった曲。ずっと名前が決まらず悩んでいたときに、大学時代の仲間たちと会って、ひたすら笑い合う時間がありました。その時に、懐かしく、でもゆっくりと変化していく友たちとこの曲が重なりました。
Old Palというのはカクテルの名前でもあるのですが、なかなか飲める場所がなく残念に思っていました。ところが、この曲のレコーディングを終えた日の夜、高崎の街を歩いて偶然出会ったバーで、このカクテルを作ってもらえたのです。あの色と味は忘れられません。
7. TOWARDS
先へ!先へ!と進んでいきたいといつも願い、意気投合することもあればぶつかり合うことも多くある、私たちを表したような一曲です。未知の世界へ足を踏み入れるのは怖いですし、いろいろなことを考えて準備することももちろん大切だけれど、時にはわくわくする心だけを持って挑戦してみても良いと、私は思います。そんな時に寄り添える一曲になったら嬉しいです。
8. Paths Intertwined
アルバムタイトルにもなっている「絡み合う道」という曲。今、素敵な人たちに出会い、共に時間を過ごせて、気持ちを共有できている毎日がとにかく嬉しくて、楽しくて、その気持ちを伝えたくて書いた曲です。私がYenTingにそう伝えると、彼女はこのタイトルと”言葉”を、そして、その思いを受け取ったメンバーがこの曲に命を吹き込んでくれました。
皆さまの道と私たちの道が出会ったことへの感謝、そしてこれからもずっとその道が続いていってくれることを心から願っています。